「Agentic AI」がSaaS市場を再定義する? Bainの最新レポートをわかりやすく解説

米コンサルティング企業 Bain & Company が、「Agentic AI(エージェント型AI)」によってSaaS市場が大きく変わる可能性についてレポートを公開しました。

従来の生成AIは「質問に答える」「文章を作る」ことが中心でしたが、Agentic AIはその先――
“自律的に判断して、複数の作業を実行するAI” を指します。

例えば、

  • メール内容を読み取る
  • ERPやCRMからデータを取得する
  • 条件を判断する
  • 承認フローを進める
  • 必要なら人間にエスカレーションする

…といった一連の業務を、AIが“作業者”として動く世界です。


Agentic AIは「SaaSを破壊する」のか?

結論から言うと、Bain & Company の見解は少し意外です。

多くの人は、

「AIエージェントが普及すると、SaaSは不要になるのでは?」

と考えています。

しかしBainは、

「SaaSが消えるというより、“SaaS同士をつなぐ人間の作業”がAIに置き換わる」

と分析しています。


これまで自動化できなかった“人間の調整作業”

企業では今でも、多くの業務が「人力」でつながっています。

たとえば経理部門では、

  1. ERPからデータを取得
  2. Excelと照合
  3. メール内容を確認
  4. 問題があれば上司へ確認
  5. 承認処理を行う

といった流れが普通に存在します。

この「システム間の橋渡し」をしているのは、人間です。

従来のRPAでは、ルールが曖昧だったり例外対応が必要な場面に弱く、完全自動化が難しいケースも多くありました。

しかしAgentic AIは、

  • 自然言語を理解
  • 状況判断
  • 複数ツールの連携
  • 柔軟な例外対応

が可能になりつつあり、“人間のオペレーション部分”に入り込めると期待されています。


Bain予測:「1000億ドル市場」になる可能性

Bainの調査では、この“AIによる業務調整レイヤー”だけで、

米国市場で約1000億ドル規模

になる可能性があるとされています。

つまり、AIが既存SaaSを全部置き換えるというより、

  • Salesforce
  • SAP
  • Workday
  • ServiceNow

など既存システムを横断して動く「AIワーカー層」が巨大市場になる、という見立てです。


SaaS企業は「座席課金モデル」を維持できなくなる?

ここはかなり重要なポイントです。

従来のSaaSは、

  • ユーザー数
  • アカウント数
  • 月額ライセンス

で収益化していました。

しかしAIエージェントが実務を代行するようになると、

「人間が何人ログインしたか」

の価値が下がっていきます。

そのためBainは、

SaaS企業は“ログイン課金”から“成果課金”へ移行する必要がある

と指摘しています。

例えば、

  • 処理件数ベース
  • 削減工数ベース
  • 成約数ベース

などへ移行していく可能性があります。


今後強くなる企業の特徴

Bainは、AI時代に強いSaaS企業の条件として以下を挙げています。

1. 独自データを持っている

AIモデル自体はコモディティ化しやすいため、差別化は「データ」に移ります。

特に、

  • 長年蓄積した業務データ
  • 顧客行動データ
  • 業界特化ルール

を持つ企業は強いとされています。


2. 業界ルール・規制に強い

金融、医療、保険などは、
単純なチャットAIだけでは代替しにくい分野です。

コンプライアンスや監査対応を含むSaaSは、依然として優位性を持つと考えられています。


3. AIを“追加機能”ではなく“中核”にできる

単なる「AI搭載」では不十分で、

  • AI前提のUX
  • AIによる自律実行
  • AIエージェント同士の連携

まで設計できる企業が勝つと見られています。


一方で、懐疑的な声もある

ただし、現時点では「Agentic AI hype(過熱)」を指摘する声も少なくありません。

Redditなどでは、

  • AIの判断精度がまだ不安定
  • 顧客対応は結局人間が重要
  • “Agentic”を名乗るだけの製品も多い

といった意見も出ています。

実際、Gartner系の議論では、
「本当にAgentic AIと言える企業はごく一部」という指摘もあります。

つまり現在は、

“革命の始まり”ではあるが、まだ成熟市場ではない

という見方が現実的かもしれません。


まとめ

今回のBainレポートで重要なのは、

「AIがSaaSを消す」ではなく
「AIが“人間の操作レイヤー”を置き換える」

という視点です。

これは、今後のIT業界を考えるうえでかなり大きな変化です。

特に日本企業では、

  • Excel転記
  • メール確認
  • 承認フロー
  • システム間コピペ

のような“人力運用”がまだ大量に残っています。

Agentic AIは、まさにそこを狙っています。

数年後には、

「人がSaaSを操作する」のではなく、

“AIエージェントがSaaSを操作し、人間は監督する”

という構図が当たり前になっているかもしれません。


参考リンク


※免責事項:本記事は公開情報をもとに、ららポータル編集部が独自に要約・解説したものです。引用元記事および各社の公式見解を完全に代弁するものではありません。掲載内容の正確性・完全性・最新性について保証するものではなく、投資・経営・技術導入等の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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